直江兼続は知謀の男です。ただし、ただの策略家ではありません。

 誰もが目先の利のみに飛びつく戦国の世にあって、義をつらぬくにはどうすればよいか、領民や家臣に対する愛とは何なのかということを、正面から大まじめに考えた男です。考えただけではなく、兼続はそれをおのが生きざまのなかで実践してみせました。自分が守るべき弱い立場の者には情けの心を持ち、筋の通らぬことを言う強大な敵に対しては、いささかもひるまず毅然と立ち向かったのです。

 つねに正々堂々と、悠然とした直江兼続の生き方は、「弱きを助け、強きを挫く」という武士道精神そのものだったと言えます。彼をささえていたのは私利私欲ではなく、民を思うおおやけの心でした。ひねくれた人間には、そこのところがわからない。兼続は雨に濡れた巨木のように、悠然と聳え立っていただけなのですから。
 閉じる